折花姫(5)
木々におおわれたその中に、外からはわからないように、丸太小屋が建てられました。川で魚を捕ったり、山のけものを追いかけたり、木の実をとったりして、ひっそりと暮らしました。
武将と二人の供の侍は、いつも目をひからせ、耳をそばだててゆだんなく見張っておりました。
「姫さま、ご不自由をかけますが、しんぼうなされませよ。」
幼いころから、母のいない姫をお世話していたじいやとばあやは、いたわるように言いました。
「いいえ、山の暮らしはまた楽しゅうございまする。父上やじいややばあやがいっしょですもの。」
姫は明るく言ってばあやの手伝いをしました。慣れぬ仕事に手はひびわれていたいたしそうです。
二人はそれを見て、そっと涙をぬぐうのでした。

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