折花姫(3)
武将と折花姫たちは、農民の姿に身を変えて、小田原から丹沢山の奥深くはいってきました。原生林が生い茂り、昼も暗い山の中です。
一行はあたりをうかがいながら背丈ほどもある草をかきわけて進んで行きました。鳥の飛び立つ羽音にもぎょっとして、立ち止まりました。すると、
「たしかに人の声が聞こえたぞ。」
「あっちの方だ。のがすな。」
追手の声です。ガサガサと草を踏み分けてこちらの方へ向かって来るようです。
お供の侍のひとりが
「ここは私におまかせ下さい。追手は私がひきうけますゆえ、はやくここをのがれて安全なところへ。」
侍はわざと音をたてながら、反対の方へ進んでいきました。一行はすばやくそこを離れました。

戻る   三姫物語へ   次へ