くしかわ姫(11)
しばらくたって、・・・。
旅に出た若君が病で亡くなったという悲しい知らせがとどいた。
姫が、川面に若君の姿を見、櫛を落としたあの夜のことであったと。
ある夜、姫は、やつれはてた姿で川岸に立った。
「若君、あなたはひとりで遠いところへ旅立っておしまいになりました。私はあなたの命である櫛を落としてしまいました。私もすぐに若君のおそばへ参ります。」
瞳は遠くを見つめ、どこかしあわせそうであったと。
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