雛鶴姫(11)
苦しむ姫をだいて、家臣たちは秋山嶺のいただきに登り、松の枝を折ってしとねをつくりました。
しばらくして、姫のお産がはじまり、御子が生まれました。
しかし、泣き声すらたてず、そのままなくなってしまったのです。姫は、つめたくなった御子をひしと抱いて、苦しい息のしたで言うのでした。
「御子よ。さぞひもじかったでしょう、つめたかったでしょう、許してくだされ。母もすぐまいりましょう。」
そして、見守る家臣たちに、
「お世話になりました。・・・なにとぞ親王さまのみしるしを・・・お守りくだされ・・・」
言い終わると、姫は静かに息をひきとりました。
家臣たちの泣く声が凍て付く夜のしじまにひびきました。
世の無情を訴えるように、遠く低く山々をふるわせました。

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