なぜ、あの人は
急に休んでしまうんだろう？

「就労アセスメント」と聞くと、難しい評価のように感じるかもしれません。

一言でいえば、それは「ご本人の働く力と、職場環境との相性を"見える化"するプロセス」です。

多くの現場では、担当者の「野性的勘」や経験則で採用や配慮が行われています。 それはとても貴重な力ですが、担当者が変わると引き継げなかったり、人によって支援の質にばらつきが出たりする課題がありました。

就労アセスメントは、客観的なツールや視点を用いることで、

• ご本人の得意なこと・苦手なこと
• どう伝えれば理解しやすいか（視覚優位、聴覚優位など）
• どんな環境なら集中できるか

といった特性を、誰にでも共有できる「共通言語」に変えていきます。

これは、ご本人と職場とのミスマッチを防ぎ、採用やその後のマネジメントを「確かな戦略」へと進化させるための、実践的な手法です。

雇用現場でこんな場面はありませんか？

• 些細なミスで「もうクビになる」とひどく落ち込んでしまう
• 「頑張ってるね」と褒めたのに、なぜか表情が晴れない
• 実習では完璧だったのに、入社後に急に休みがちになった

精神・発達障がいのある方が抱える困難の本質は、「うつ病」や「発達障がい」といった“病名・障がい名”だけでは説明できません。 その背景には、これまでの人生で経験してきた「人との関係における傷つきの物語」があります。

認めてもらえなかった経験、否定され続けた経験から、心の中に安心・安全を感じられず、自分を守る力が弱くなっているのです。 だからこそ、職場という新しい環境で、再び傷つくことへの不安が、表面的な行動として現れます。

私たちが「障がい」と呼ぶものの正体は、ご本人の能力の問題だけでなく、こうした「傷つきからのリカバリー」がまだ途中である状態、と言えるのかもしれません。

「障がい」は、ご本人の中だけに存在するものではありません。 むしろ、ご本人の特性と、社会や職場といった「環境」とがうまくかみ合わない時に生まれる“ミスマッチ”、それが「社会的な生きづらさ」です。

例えば、「集中力がない」と見られていた人が、パーティションで仕切られた静かな環境を用意することで、誰よりも高いパフォーマンスを発揮することがあります。 この場合、課題は本人にあったのではなく、環境との掛け算にあったのです。

企業ができることは、ご本人を変えることではありません。 アセスメントを通じてその方を深く理解し、職場環境を少し調整することで、ミスマッチを解消していくことです。 その関わりは、「人の中で傷ついた経験は、人との温かい関わりの中でしか回復しない」という、ご本人のリカバリーのプロセスそのものを支える力になります。

そして、一人のために行った環境調整が、結果的に他の社員にとっても働きやすい環境を生み出し、組織全体の生産性向上やメンタルヘルス不調者の減少（健康経営）にもつながっていくのです。