この物語は、まだ逗子にもたくさんのきつねが住んでいたころのはなしです。

きつねのなかでも披露山のお夏と久木の孫三郎は有名でした。

小雨降る闇夜の晩に、披露山に住むお夏ぎつねは、七曲の細道をちょうちんに 照らされ、久木に住んでいる孫三郎のところへお嫁にゆきました。

めおとになったきつねたちは、わるじえをはたらかせ、披露山のふもとの小坪で とれた魚を売り歩く魚売りたちをだますのが好きでした

ある日のこと、夫婦のきつねが話していました。
「村人に化けて相撲をとったり・・・」 
「馬に化けてだましたり・・・」 
「いろいろだましてきたが、他におもしろいものがないかなぁ」 
「うぁ!ここに肥だめがあるわ。これで何か出来ないかしら。」 
「そうだ、これを風呂にしてだましてやろう。」

「それはおもしろそうね・・・」
売れ残った魚をかついだ魚売りは汗をかきかき披露山の峠まで帰ってくると 岩かげにいい湯がわいています。
「これはいい。汗もかいたしお風呂にでも入っていこう。」
魚売りは湯につかり鼻歌を歌い始めました。 
「日も暮れてきたしそろそろ帰るとするか。」


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