「景気動向調査」結果(平成23年4月調査)

1.調査結果の概要

(1)売上の状況
 図表1に全国および神奈川県との売上比較データを示す。全国のデータは中小企業庁発表(平成2331日実施(*1))の、また神奈川県のデータは神奈川産業振興センター発表(平成232月実施(*1))の全業種の平均である。平塚市の全業種の売上DIは、前回より0.2ポイント上昇して−43.1%となった。全国・神奈川県・平塚市ともに平成20年〜21年に大幅に低下した後に平成22年は上昇したが、今年も上昇している全国・神奈川と比べて、今年の平塚市の売上DIは前年とほぼ横ばいになっている。平塚市における今後の見通しは、今年よりもやや悪化するであろうとの予測がでている。
(*1)全国、神奈川県の売上比較データは、平成23311日の東日本大震災以前に実施した調査であるため、震災の影響が反映されていない。

図表 1 売上DI(全業種)

 図表2に平塚市の業種別売上DIを示す。全業種のDIがマイナス水準と厳しい状況が続いているが、業種全体は昨年とほぼ横ばいである。飲食業がプラス30.7ポイント、建設業がプラス19.8ポイントと大幅に上昇したのをはじめ、小売業でプラス2.1ポイント、サービス業でプラス3.4ポイントと多くの業種で回復を見せている。このように、全体的に回復傾向を示す一方で、製造業と卸売業は、製造業でマイナス21.2ポイント、卸売業でマイナス20ポイントと大幅な落ち込みを見せている。今後の予測としては、卸売業が今年の落ち込みからは大幅に回復するであろう、製造業・サービス業でも回復に向かうであろうとの予測であるが、建設業は大幅に落ち込み、小売業、飲食業においても低下すると予測されており、全体としてわずかながら低下するであろう、との見通しである。

図表 2 売上DI(平塚市の業種別)

(2)採算の状況
 図表3に全国および神奈川県との比較データを示す。平塚市の業種全体の採算DI(経常利益ベース)は、前回より1.2ポイント上昇して−48.1%となった。全国および神奈川県においても同様の回復傾向が見られる(*2)

(*2)採算比較データについても、全国、神奈川県は東日本大震災以前に実施した調査であるために震災の影響が反映されていない。

図表 3 採算DI(全業種)

 図表4に平塚市の業種別採算DIを示す。すべての業種のDIが大幅なマイナス水準と極めて厳しい状況が続いているが、大幅に回復した昨年ほどではないものの全体的にはゆるやかに回復している。建設業は17.3ポイント上昇の−45.4%と特に上昇の幅が大きく、商業は2.3ポイント上昇の−53.9%となっている。製造業だけは14.9ポイント低下の−38.6%となっている。

図表 4 採算DI(平塚市の業種別)


2.製造業の景況

(1)経営状況に関する指標
 図表5に製造業の経営状況に関する指標を示す。すべての項目においてマイナス水準と極めて厳しい状況が続いている(*3)。「受注単価」「雇用者数」「設備投資」については−33.1%、−5.5%、−13.2%と1020ポイント程度上昇、「資金繰り」は−36.3%で1.8ポイントとわずかに上昇している。一方で「売上高」「採算」「引き合い」については、−32.0%、−38.6%、−22.4%1020ポイント程度低下している。「在庫」についても2年ぶりにプラスに転じるなど、在庫過剰感が高まりつつある。
(*3)在庫は「過剰−不足」の逆サイクル

図表 5 経営状況に関するDI(製造業)


(2)最近の経営上の問題と今後の経営課題

 図表6に製造業の最近の経営上の問題、図表7に今後の経営課題についての集計結果を示す。
 最近の経営上の問題では、今年も「売上高の減少・停滞」「受注・製品単価の低下」「採算悪化」「競争の激化」といった、業績に直接関連する項目を挙げる企業が多いが、昨年に比べるとほぼ横ばいもしくは減少している。一方で、原油・原材料高、人件費負担、諸経費の増加、従業員過剰など、人件費など費用負担を問題として挙げる企業の割合が増えている。また、「立地環境」を挙げる企業の割合が若干増えている。
 また、今後の経営課題では、今年も「売上高の確保」を挙げる企業の割合が高く、「原価低減」「人材の確保・育成」と続いている。

図表 6 最近の経営上の問題(製造業) 図表 7 今後の経営課題(製造業)


3.建設業の景況

(1)経営状況に関する指標
 図表8に建設業の経営状況に関する指標を示す。「売上高」「採算」「引き合い」「受注単価」については、−37.1%、−45.5%、−47.4%、−41.2%と前回からは回復しているが依然として厳しい水準である。「在庫」は−18.3%となっているが、在庫削減というプラスの要因よりも、調達難による在庫不足という東日本大震災の影響が大きいと思われる。その他の項目については昨年と比べてほぼ横ばいもしくは回復しているが、依然として厳しい建設業の状況がうかがえる。

図表 8 経営状況に関するDI(建設業)


(2)最近の経営上の問題と今後の経営課題

 図表9に建設業の最近の経営上の問題、図表10に今後の経営課題についての集計結果を示す。最近の問題では、「売上高の減少・停滞」「競争の激化」「受注・製品単価の低下」「採算悪化」といった業績に直接関連する項目を挙げる企業が多いが、昨年と比べるとやや割合が少なくなっている。また、「原油・原材料高」を問題として挙げる企業の割合が大幅に増加している。今後の課題では、昨年同様「売上高の確保」「原価低減」「新分野開拓」「合理化・省力化」といった業績回復のために早急に解決すべき項目を挙げる企業が多い。

図表 9 最近の経営上の問題(建設業) 図表 10 今後の経営課題(建設業)


4.商業の景況

(1)経営状況に関する指標
 図表11に商業の経営状況に関する指標を示す。すべての項目でマイナス水準(*4)であり厳しい状況が続いている。「経費」は今年増加し、コスト面に問題を感じている企業が増えている。「経費」以外の各項目のDIは昨年に比べてほぼ横ばいもしくは回復している。
(*4)経費DIは「減少−増加」にて算出

図表 11 経営状況に関するDI(商業)

(2)最近の経営上の問題と今後の経営課題
【卸売業】
 図表12に卸売業の最近の経営上の問題、図表13に今後の経営課題についての集計結果を示す。最近の問題では、今年も「売上の減少」「利益率の低下」「仕入価格上昇」といった項目を挙げる企業が多く、特に「仕入価格の上昇」を挙げる企業が大幅に増えている。また、「原油高」についてあげている企業が多く、「仕入価格上昇」「諸経費の増加」と合わせて、依然としてコスト高は大きな経営上の問題である。今後の経営課題では、「顧客の新規開拓」「諸経費の削減」といった項目を挙げている企業が多い。「原油・原材料高への対応」を今後の経営課題として挙げる企業が非常に増えている一方で、「人材の確保・育成」を挙げる企業は減少している。

図表 12 最近の経営上の問題(卸売業) 図表 13 今後の経営課題(卸売業)


【小売業】
 図表14に小売業の最近の経営上の問題、図表15に今後の経営課題についての集計結果を示す。現在の問題は、「売上の減少」「利益率の低下」を挙げる企業が多くなっている。また、「仕入価格上昇」をあげる企業の割合が大幅に伸び、「諸経費の増加」と合わせてコスト面は大きな問題となっている。今後の経営課題では、「顧客の新規開拓」「接客等のサービス向上」「諸経費の削減」「取扱商品の充実」といった業績向上につながる項目を挙げる企業が多く、「人材の確保・育成」「後継者への円滑な承継」「原油・原材料高への対応」と続いている。

図表 14 最近の経営上の問題(小売業) 図表 15 今後の経営課題(小売業)

【飲食業】
 図表16に飲食業の最近の経営上の問題、図表17に今後の経営課題についての集計結果を示す。最近の問題では、「売上の減少」「利益率の低下」を挙げる企業が多く、以降は「後継者問題」「諸経費の増加」「仕入価格上昇」「店舗の老朽化」と続いている。特に、「後継者問題」を挙げる企業も45.0%と前回にくらべ大きく増加している。今後の経営課題では、「顧客の新規開拓」「諸経費の削減」「接客等のサービス向上」といった業績向上につながる項目が高い割合を占めている。「後継者への円滑な承継」も25.0%と多くの企業が課題と感じている。


図表 16 最近の経営上の問題(飲食業) 図表 17 今後の経営課題(飲食業)


【サービス業】
 図表18にサービス業の最近の経営上の問題、図表19に今後の経営課題についての集計結果を示す。最近の問題は、「売上の減少」「利益率の低下」「諸経費の増加」が上位を占めている。また、「仕入価格の上昇」を挙げている企業の割合が増えており、「諸経費の増加」「燃料・配送コスト上昇」と合わせてコスト面が大きな問題であることが分かる。今後の経営課題では、「顧客の新規開拓」「諸経費の削減」「原油・原材料高への対応」「接客等のサービス向上」「人材の確保・育成」といった項目の割合が多くなっており、特に「原油・原材料高への対応」は大幅な上昇となっている。

図表 18 最近の経営上の問題(サービス業) 図表 19 今後の経営課題(サービス業)


5.東日本大震災の影響

図表20に、311日におきた東日本大震災に対する直接的・間接的影響についての集計結果を示す。
 全業種に共通している点では、直接被害を挙げる企業の割合はそれほど高くなかったが、需要減(消費マインドの低下)による売り上げの減少を挙げる企業が多かった。飲食業ではほとんどの企業が消費マインドの低下を挙げており、歓送迎会・入学・卒業イベントの自粛による団体需要の縮小など、大幅な打撃を受けている。また、仕入価格の上昇を挙げている企業が多い。調達ルートが寸断されたことにより、仕入れ体制が混乱し、同時に品不足により価格が高騰して大きな影響を受けており、「資金繰りの悪化」を挙げている企業の割合も高くなっている。
 工業部門では、部材の入荷遅れ、および自社の納期遅れなどを挙げる企業の割合が多く、川上・川下ともにサプライチェーン全体で大きな影響を受けていることが窺える。また、復興需要の高まり・代替生産による売り上げ増を挙げた企業は製造業では6.1%、特に影響ないと答えた企業は製造業で11.6%、サービス業で15.7%であったが、他の業種においてはほとんど見られなかった。

図表 20 東日本大震災の影響


6.考  察

今回の調査で、平塚市の景況感は昨年回復したが、今年は業種によって大きな差があるものの、業種全体ではほぼ横ばいで推移していることが確認された。また、東日本大震災の影響の調査から、すべての業種にて業績に直接関係する影響を受けていることが明らかになった。
こうした中、中小企業には補助金や融資、雇用・人材支援、情報提供などの各種支援策が実施されている。いずれもヒト、モノ、カネ、情報といった経営資源を補完する支援である。今回の調査でも、多くの企業がこうした支援のさらなる充実を期待していることから、中小企業にとって有効な支援策であることに疑問の余地はない。
 しかし、厳しい環境が続く中で、外部からの経営資源補完型の支援だけでは経営の安定化は難しい。そこで、自社独自の経営管理の仕組みを工夫し、経営力を向上させることも必要である。経営管理の仕組みといっても特別なものではなく、日々の活動の中で知識の吸収や経験の積み重ねから習得していく。状況によっては、専門家による個別経営相談などの支援が有効となろう。
経営管理とは、最小のインプットで最大の成果をあげることが目的であり、ヒト、モノ、カネ、情報、さらには自社の独自能力といった経営資源の有効活用ができるどうかにかかっている。
 ヒトについては、中小企業にとって人材確保が難しいため、現状の社員の力をフルに引き出すことを考える。社員の強みを生かして適材適所に配置し、自律的な活動により成果を上げさせる。その成果に対しては、職務権限の委譲などで報いることである。
 モノについては、設備、原材料を適正に調達し、効率的、効果的にフル活用させることである。そこで、徹底的にムダを省くことがポイントになる。5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾)の徹底とともに、業務スケジュールや進捗状況のチャート化、生産状況のグラフ化などにより、全社員が常に状況を把握して、目で見る管理ができるようにしておきたい。
 カネについては、「いくら儲けたか」だけでなく、「いくら手元の資金を増やしたか」というキャッシュを意識した経営に転換していく。決算書は経営者自ら読み取り、資金の流れを常に見直し、社員に対しても資金の大切さを喚起することである。
 情報については、社内のコミュニケーションを円滑にする。経営に関する情報や、社員やその周辺がもつ情報が社内を行き交う仕組みを確立する。特に現場の声が経営者に迅速に届くことが重要である。それには経営者の日常的な現場歩きも有効となる。
 独自能力については、中小企業は大手との差別化を図るための競争優位の確立が求められる。そのためには、自社の強み、特徴を生かした独自のコア能力を、知恵を絞って考え出すことである。ポイントは、自社の製品・サービスに顧客が何を求めるかであり、キーワードは、「こだわり」「個性」「専門性」「小回り」「地域密着型」などである。
 まだしばらくは震災の影響も残り、厳しい事業環境が続くと思われる。しかし、徐々に景気も持ち直すと期待されている。経営資源補完型の支援策を活用されるだけでなく、独自の経営管理の仕組みで経営力の向上を図り、経営体質をより健全なものにしていただきたい。


7.調査方法・その他
(1)調査方法
 この景気動向調査は平塚市の企業を対象として、平成235月に実施したものである。また、比較データとして平成17年〜平成22年(ともに4月)の調査結果をもとにした。調査方法は郵便による無記名の調査票(アンケート)回収方式である。今回の調査票発送数、回収数、回収率を図表21に示す。

(2)DIの意味
 景況を表すDIとはディフュージョン・インデックス(Diffusion Index)の略で、良くなったとする企業数から、悪くなったとする企業数を差し引いた数の全体に対する比率である。


図表21 平成235
景気動向調査回収状況

業   種

発送数(件)

回収数(件)

回収率

22年回収率

工   業

706

246

34.8%

33.8%

製 造 業

332

147

44.3%

41.4%

建 設 業

374

99

26.5%

27.1%

商   業

940

285

30.3%

33.9%

卸 売 業

121

49

40.5%

43.6%

小 売 業

375

114

30.4%

35.2%

飲 食 業

117

20

17.1%

28.5%

サービス業

327

102

31.2%

31.0%

合   計

1646

531

32.2%

33.9%

   景気動向調査票(工業関連企業)    景気動向調査票(商業関連企業)


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